近年、さまざまな外的環境が大きく変化してきたことで、生物の在来種の減少や、生物多様性の減失が進んでいます。当研究分野では、野生動物の保護管理や、環境の向上に貢献する研究を行っています。動物生態学の知識や獣医科学の技術などを用いて、外来種が侵入しやすい環境の予測、野生動物における遺伝的構造の変化、生息環境と動物の形態との関係について研究しています。また環境調査に役立つ技術の開発にも取り組んでいます。
野生動物は現在、全国各地で深刻な被害を発生させており、大きな社会問題となっています。そのため、農作物被害や人身被害の軽減を目的とした個体群管理が行われている一方で、個体数の減少および絶滅が懸念される地域では保護の対象にもなっています。すなわち、個体群の絶滅と被害の発生という2つの相反するリスクを最小化するリスク管理が必要になっています。本研究では、野外調査をはじめGIS(地理情報システム)および遺伝子解析などを行い、大型野生動物の生態解明をして彼らの将来を予測することを試みています。
親は自分の子供を少しでも多く残すため、限られた資源(エネルギー)をどのように投資するのか、様々な戦略を取っています。具体的には、精子特性に対する投資(精子運動を早めるべきか、あるいは精子の寿命を長くすべきか)、卵に対する投資(卵を大きくするべきか、それとも数を増やすべきか)、性比に対する投資(雄を多く産むべきか、あるいは雌を多く産むべきか)は、少しでも多くの子を残すための親の投資戦略です。本研究では、これら様々な親の資源投資戦略を理解するため、魚類および哺乳類の野外調査および室内実験に取り組んでいます。
かつて野生の生き物が住んでいた森林や草原は切り開かれ、農耕地や人の居住地へと姿を変えました。そこに住んでいた多くの生き物が去ってしまった一方で、そういった人為的な空間を利用する生き物は意外にも数多く存在します。彼らは行動やライフスタイルを変化させることで人為的な空間に順応していることが分かってきましたが、同時に生理学的な応答の変化が生じていることも近年少しずつ明らかになってきました。例えば、都市生物は本来であれば都市ストレスにより高ストレス状態になってしまうはずなのに、ストレス応答の馴化が生じることでストレスを感じないで生活ができているようです。当研究室の一つの研究として、このような生理学的な順応に着目し、生き物が人から受ける影響に対してどのように応答しているのか、どのように人為的な活動や空間に順応しているのかをホルモン解析を主軸とした生理学的アプローチにより解明しようと試みています。