▲左から三浦孝之准教授、佐藤薫教授
佐藤:この度、「麹チーズ」の製造技術を開発しました。「麹チーズ」とは、その名のとおり「麹菌」を使って熟成させたナチュラルチーズです。
3年前に「海外のチーズにはなく、日本独自といえるチーズを創り出そう」という発想でプロジェクトが立ち上がり、麹チーズの開発に挑みました。
日本の食文化といえば、やはり“発酵”です。私たちが日常よく口にする醤油や味噌、そして日本酒など、“発酵”は日本にとって欠かせないものになっています。そこで、「麹」(穀物に麹菌を繁殖させて発酵したもの)をチーズと合わせたら面白いのではないかとひらめきました。
三浦:また、この麹チーズには酒粕を使用していることも特徴です。以前から酒粕を有効利用したいと考えていて、様々な研究をしていました。麹チーズに各地の酒造の酒粕を加えることでその地域の特色が出ますし、お土産品としても最適だと思います。
▲表面をよく見ると、麹菌がふわっと生えているのが特徴です。
三浦:麹を使ったチーズは、これまで研究者やいくつかのチーズ屋さんが挑戦したようですが、麹菌がチーズの表面に上手く生えてくれず、製品化までは至りませんでした。
佐藤:そこで我々はまず、麹チーズの熟成に適した麹菌を選抜し、次に製造工程と熟成温度条件など、科学的な面から幅広く研究しました。今回、ようやく一般財団法人蔵王酪農センターから商品として発売することができました。チーズに合う麹菌の選定のために、カラフルなチーズをたくさん食べました(笑)赤色をしていたり、黒色、黄色など…。味が良くても見た目もやっぱり大切だと実感しました。麹菌を扱っている企業の方々の努力があり、今の綺麗な白色の麹チーズになりました。
三浦:今回の研究成果を発表したところ、「うちにも麹を使ったチーズがあるが、これは違うのか?」という問い合わせもいくつかありました。実際に「麹を使ったチーズ」は販売されています。しかし、これは塩麹という“調味料”を使って味付けしたチーズに過ぎません。我々が開発した麹チーズは、チーズの表面に麹菌を生やしたチーズですので、似ているようですが製造方法も風味も全く違います。
▲パンフレットにも「麹」マークが(左下)。
佐藤:今後は連携先の麹メーカーから、チーズ専用の菌として麹菌が販売される予定で、この菌を使えばこの「麹」マークをつけることができるようになります。
我々は麹チーズの製造方法を全国のチーズ工房さんに普及させ、「麹チーズ」という新しいチーズのジャンルを作っていきたいと考えています。最終的には国産チーズ市場の活性化につながっていければと考えています。
佐藤:麹チーズの開発もそうですが、“食”というものづくりにおいて大切なのは「美味しい!」と思ってもらうことです。我々乳肉利用学教室の役割は「美味しいものをカタチにする研究」だと考えています。
三浦:科学の視点から、一緒に「美味しいものづくり」をしたいという学生さんをお待ちしています!