富士アニマルファーム副牧場長
古田 洋樹
(動物遺伝育種学教室 教授)
富士アニマルファームは本学の獣医学、畜産学の教育・研究を担うために1992年に富士河口湖町に付置され、多くの学生が農学の教育現場として活用してきました。富士山を背に、草地に牛や馬がいる姿はとても雄大です。心が和む環境のもと、長きに亘り「実学の場」として学生に親しまれてきました。しかし、時代の流れとともに教育・研究面だけでなく、「社会貢献」や「運営収益」も重要な課題とされ、大学付属牧場には大きな変化が求められています。酪農学園大学ではDeLaval株式会社と包括連携協定を結び、酪農を支える優秀な人材の育成、教育研究施設である酪農生産ステーション構想などを掲げて時代の変化に対応しています。富士アニマルファームも大学付属牧場として教育のみならず、これからどのような展開が望ましいのかを考えなければなりません。日本の畜産は加工型と揶揄されてから一世紀になります。輸入飼料に依存して栄養の源は海外から、ふん尿由来の窒素は利用されず、もはや海洋汚染源となっています。富士アニマルファームでは隣接する農地の拡張整備が行われ、牧草地は倍増されました。自給飼料生産の強化と獣医・畜産学研究が結びつき、社会的責務である持続的、循環型農業を目指し、日本の農業は日本獣医生命科学大学からと、変革の第一歩を踏み出だす予定でした。しかし、持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの考え方を満たすまでに至っておりません。現状維持ではなく、牧場の現状をふまえて、教員と牧場スタッフが情報を共有し、何ができるか、何をするのか解を示す時期に来ています。
農学離れが進むなかで、未来につながる生産現場の魅力を全面的に発信し、富士アニマルファームにおける未来予想図の歩みを止めることなく、一歩一歩確実なものとなることを望み、今後の富士アニマルファームの存続と躍進のために皆様のご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
富士アニマルファーム副牧場長
落合 和彦
(獣医学科獣医衛生学研究室 准教授)
メインキャンパスが東京都市部に位置する本学では、産業動物生産農場である富士アニマルファームが、獣医学・獣医保健看護学・動物科学・食品科学における教育・研究に大きな役割を担っています。教育活動が広範に制限されていた新型コロナウイルス流行にもようやく出口が見えはじめた2022年度より、宿泊を伴う学生実習が徐々に実施可能となったため、感染症対策に留意しながら、各学科、約3年ぶりに牧場実習を行いました。参加学生のほとんどが入学以来初の宿泊実習であったため、初めて体験するウマやウシ、ヤギ等のハンドリングに戸惑いながら順応し学修効果を上げるとともに、学生どうしの距離感も試行錯誤しながら近づくことができた実習となりました。
富士アニマルファームの運営形態は、生産農場としての機能・収益を維持しつつ教育・研究に寄与しているため、世界の物流情勢や為替相場の変動等に経営上大きな影響を受けます。いわば日本の畜産業の縮図といえる付属牧場で産業動物に関する生産技術を学ぶことは、エビデンスに基づく実践教育の場として最良の教材になっていると思います。さらに、生産物の量や品質の向上、それに伴うコスト増を抑制するための畜産・食品加工技術の開発。獣医学的見地からの感染症・繁殖障害の予防・診断・治療技術の開発は、充実した付属牧場施設無くては達成することができません。このように充実した教育・研究リソースである富士アニマルファームのさらなる活用を全学規模で展開していきたいと思います。
この度、小職が副牧場長を拝命した経緯のひとつに、所属する獣医衛生学研究室が行う獣医学科3年生と4年生の動物衛生学実習で、富士アニマルファームを活用していることが挙げられます。本実習は、獣医学共用試験で問われる産業動物の取り扱いを集中的に実践できる貴重な機会です。今後は牧場の利用者としてだけでなく、運営者の立場で創意工夫をし、さらに高い学修効果を得られる実習デザインを、関係者各位のご協力の下で目指していきたいと考えています。