Exam Guide
畜産学は家畜を飼育して人間の生活に必要な物資を生産し、加工・利用する農業の一分野の学問です。また、獣医学は動物の病気を治療・予防することにより、産業動物分野において人類の食の安心・安全を担う学問です。大学付属牧場としての富士アニマルファームは、環境との調和を諮りながら安心・安全な食糧生産を行ことにより人類の持続的生存を保障するための実践的な総合科学を行うためのフィールドです。さらに、豊かな人間性を醸成できる貴重な場所でもあります。
我々牧場スタッフは、命を育むフィールドで働くことを誇りと感じながら富士アニマルファームの使命として≪教育≫≪研究≫≪生産≫≪社会貢献≫という４つの大きな柱を立ち上げました。我々は、もてる力と情熱を尽くして富士アニマルファームの存在理由を確立するため、それぞれの柱を理解するとともに精一杯に支えていくことが使命と考えています。
一方、富士アニマルファームの限られた資源の中で、それぞれの柱は互いに利益の対立や相反を生みやすい枠組みとなっています。生産を追求する動物を用いて教育・研究も行わなければならない状況をいかに統制しながら協調させていくのかが永遠の課題です。現在は、最大多数の幸福を目指して、良好な環境と組織づくりのために努力を傾注しているところですが、いつの時も我々牧場スタッフは、大学が必要とする付属牧場としての役割を果たしつつ、地域社会が認めてくれる富士アニマルファームとして存続したいと願って活動しています。
動物科学科および獣医学科は、家畜に関する経験を全く知らない一般家庭出身で育った学生がほとんどです。そのため、家畜に関する講義や実習は重要であり、富士アニマルファームは、家畜の種類、取り扱い、飼料をはじめ、病気についての検査や治療に関する知識と技術を習得する重要な機会を提供する場となっています。武蔵境校舎での関連講義の内容を基礎として、富士アニマルファームは実際の家畜に触れて、観察することにより問題を発見し、その解決に進んで当たることのできる人材を養成するための不可欠な教育フィールドとなっています。
持続的農業、環境保全型農業、高品質や安全食材の生産への関心の高まりと共に、富士アニマルファームでの活動や研究分野に関心を持つ学生が増加しており、これらの学生に対する実習や卒業論文のための指導が行われています。生産現場での学生教育において重要なことは、幅広く農学分野を概観させ、総合的、体系的に捉え行動させることであり、これらの体験を通してはじめて、豊かな拡がりある人間性をもった人材を育てることが可能となります。このように夢と希望を持ち将来の目標を掲げて入学してくる学生を、将来の畜産分野で活躍できる人材として育成することが、社会に対する最大の責務であり、そのためにも富士アニマルファームにおける畜産学・獣医学教育の一層の充実を図りたいと願っています。
| 獣医学部 | ||
|---|---|---|
| 獣医学科 | 2年次 | 学外実習(基礎) （獣医学科選択科目） |
| 3年次 | 動物衛生学実習 （獣医学科3年次必修科目） | |
| 4年次 | 動物衛生学実習 （獣医学科4年次必修科目） | |
| 獣医保健看護学科 | 1年次 | 獣医保健看護体験実習（獣医保健看護学科1年次必修科目） |
| 応用生命科学部 | ||
| 動物科学科 | 1年次 | オリエンテーション |
| 2年次 | 農場実習 (動物科学科2年次選択科目) | |
| 4年次 | 家畜人工授精講習会 |
本学学生の自主的実習や勉強会、研究室ゼミ合宿
本学で実施される実習のために動物（牛・山羊）や生産物（牛乳）を提供
富士アニマルファームにおいて期待される研究課題は、生産現場での活動の中から問題を抽出し、その原因と解決方法を生み出すことによって生産技術を構築すること、そして経営や地域のフィールドに実践適合しうるように体系化してフィードバックすることである。しかし今日の研究は、社会情勢の変化に伴い周囲を取り巻く環境の変化が著しく、それに伴う社会的要望の多様化、細分化が進行しており、研究ニーズに対する回答と現実の状況とのずれが拡大している。また、研究者が生産現場から遊離して、本当のニーズから外れた研究分野に迷い込んでしまうことも懸念される。そのような時に研究者が総合的、体系的、生態的立場から研究を再構築することができるフィールドとしての役割を富士アニマルファームが担っており、その存在意義は貴重である。富士アニマルファームの動物飼養に対する豊富な経験に裏付けられた技術と知識をもつ牧場スタッフの存在は、研究の推進力となって大きな役割を果たしている。今後は「ワンヘルス」の精神の下、人医学との関わりの中で本牧場が果たす役割が期待される。
現在行われている研究テーマ
| 1) | 乳用牛を用いた研究 | 9課題 |
| 2) | 肉用牛を用いた研究 | 3課題 |
| 3) | 山羊を用いた研究 | 1課題 |
| 4) | アニマルウェルフェアに関する研究 | 1課題 |
富士アニマルファームの使命は教育・研究であり、それらの支援を着実に行うことが求められます。これらを支えるには根底に高い生産活動は必須であり、高い技術レベルに裏打ちされた家畜飼養を維持しなければ教育・研究の質を担保することはできません。そのため今後、時代が変わっても人間生活の原点は食と農業であり、人間が存続する限り生産現場を対象とした教育と研究も継続します。しかしながら民族や国間の紛争や気候変動により世界の食糧生産不安が増大している現在においても、我が国では農業者の生産労力に比して食料品が廉価で売られており、食料自給率は向上せず、農家や畜産家の収入も向上していません。また、家畜衛生を脅かす感染症が数多くまん延しており、感染症の侵入を防ぐ防疫体制を維持する必要もあります。
現在の富士アニマルファームの生産活動は一次生産物の販売のみであり、輸入飼料の高騰や物価高の影響を受けて出費が増大しています。高収入を目指せる副次的生産物の検討をしていますが出口を見出すことはできないでいます。このような現状でも我々牧場スタッフは日本の未来における農業の意義と役割を信じ、環境を保全しながら生産活動を持続的に行う最適の方法を見出すとともに、動物福利も十分に配慮した生産を行うべく日々努力したいと考えています。
富士アニマルファームは、2022年から酪農教育ファームとして活動しています。残念ながら実績は多くはありませんが、食の安全・安心と生産活動の理解のため地域社会との接点になって、牛乳生産活動を経験する機会を設けることにより社会貢献の役割を果たそうとしています。大学と社会との連携が求められている現在、富士アニマルファームは地域に根ざした教育施設であるとともに、東京・武蔵境校舎の隣接地域に生活されている人々や未来を担う子供達の酪農体験実習受け入れを積極的に計画しています。来場者には富士の裾野の自然環境を全身で体験し、家畜に触れ、生命の大切さを感じてもらうと共に、人間が生きるための牛乳を生産し、蛋白質としての牛肉を提供してくれる家畜に対し感謝の念を感じてもらえたら嬉しいかぎりです。現在の我が国の農業は消費者の要望に応えるために生産性向上と低コスト化が求められ、同時に安全で良質な食糧生産が課題となっていますが、そこで行われている農業の営みの一部を経験することにより、生産者の痛みも少し知ってもらうと共に、自分たちの生活がいかに農業と関連しているかを考え、日本の農業問題について正しく理解するきっかけになることを望みます。その上で地球環境の保全や人間の情操教育など農業や畜産の多面的機能とその存在意義と必要性について語り合う場として、富士アニマルファームが地域の人達が気軽に訪れ利用しやすい生涯教育の場として存続したいと願っています。
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