「歴史の中の食」をテーマにした本は『甘葛煎(あまづらせん)再現プロジェクト “よみがえる古代の甘味料”』『私の食物誌』『日本のめん食文化の一三〇〇年』などなど、これまでも取り上げてきました。
やっぱり楽しいんです、食の本は! 楽しいし面白い。
そして歴史上の話であっても、どこか身近に感じられます。
「農産食品学教室」の奈良井朝子准教授・松田寛子講師のおふたりに聞いてみました!
■今回、「豆腐百珍」に注目してみたんですが、ズバリ豆腐はお好きですか?
奈良井:好きです!夫と息子は絹ごし派、私は木綿派です。ちなみに娘は納豆党です(笑)。
豆腐と納豆を冷蔵庫から欠かしたことはないですね。
松田:わが家も同様で、豆腐専門店から毎月、お取寄せもするんですよ!
エビチリ風とか唐揚げ風とか、アレンジできるキットになっていて、勉強にもなっていますね。
■お豆腐屋さん自らも食べ方を発信されているということですね
豆腐のポテンシャルって、やっぱりヘルシーさでしょうか
奈良井:食べ方のバリエーションが豊富で、簡単にいろいろ工夫できるのがポイントですね。
あと1品追加したいときも、冷や奴とか火も通さなくていい。
鰹節とかすりおろし生姜とか、梅干しとかかけて…白和えみたいに崩してもいいですしね。
松田:それに豆腐や豆乳って「代替品としてとにかく便利」。
味や風味をそれほど損なわずに、乳製品やお肉に置き換えることができますよね。
とは言え、動物性食品本来のお肉みたいな、パワーやインパクトには物足りないという声も
わかります。今後の工夫のしどころですね。
■『クリーン・ミート』で代替肉について読んだときも、その点は思いましたね
「豆腐百珍」も「豆腐は歯が悪くても食べられるし」という観点でおススメされたりしたらしいので、いつの時代も食の工夫って多様だなと
奈良井:昔のレシピは今でも参考になりますよ。でも豆腐の柔らかさなど、おそらく今と違うので、
再現が難しかったりします。実は以前、『豆腐百珍』に注目したコラムを書いたことがあって
「結び豆腐」とか実際に作ってみたんですが、うまく結べない…難しかったですね。この時の
コラムではわが家の「シンプル豆腐・納豆ハンバーグ」もご紹介しました。『豆腐百珍』
の「叩き豆腐」を参考にしたレシピなんです。簡単だしヘルシーですよ!
■すでに『豆腐百珍』を取り上げてらしたんですね! さすがです。きっかけは?
奈良井:オープンキャンパスの公開実験で「大豆タンパク質のゲル化」をテーマにしたとき、
簡単に豆乳から豆腐をつくれないかいろいろ調べたんです。そうしたらまさかの江戸時代の
豆腐レシピ本が!ということでネット購入しました。
図書館に相談すればよかったですね(笑)。
■時代小説を読んでいても、お料理が出てくるとわくわくします
『鬼平犯科帳』に出てきた「柿のみりんがけ」とか印象的でよく覚えています
松田:柿と言えば、いま注目しているのが福島の「あんぽ柿」です!
江戸時代から「干し柿」文化があって、大正時代になって、アメリカの干しぶどうを参考に「硫黄燻蒸」という工夫が加わりました。
干し柿より柔らかくてジューシーで、クリームチーズなどにも合うんですよ。
■干し柿は、冬のあいだの貴重な栄養源だったわけですし、SDGsでもありますね
奈良井:豆腐など、大豆の加工品が多様に発展したのも、良質のタンパク質や脂質を人々が求めて
「食べやすく」「便利に」と工夫され続けたからだと思います。
先ほど触れた「豆腐・納豆のハンバーグ」には味噌も使うんですが、
これも大豆製品ですよね。
その味噌を変えるとハンバーグの味もまた変わるんです。豊かな大豆文化の賜物ですし、
忙しい人の強い味方です。
■『豆腐百珍』でも調味料を変えたレシピがありますしね!
松田:干し柿が苦手でもあんぽ柿なら大丈夫!とかありそうでしょう?食は栄養だけでなく、風味や
色味に至るまで、食べ方に工夫が尽きません。
これからもっと、食品科学科から発信していきたいですね!
■『みをつくし料理帖』には、お豆腐の丼料理が賄い飯として登場していたと思います
奈良井:『みをつくし料理帖』はずっと気になっているんですが、シリーズ物を読む時間はなかなか
取れないんですよ!でも『料理百珍集』は借りに行きますね。
以上、農産食品学教室の奈良井准教授・松田講師からのコメントでした。
クリームチーズとあんぽ柿が合うと聞いて、本学の麹チーズとの相性を確かめたくなりました!
食品科学科ではインスタグラムなど、多様な発信を続けています。
図書館からも、本から発展したさまざまな食の話題をお届けしていきますね。
食品科学科発ブログ「食のいま」より
「豆腐百珍(その1)」図書館発ブログ「この一冊」より
『料理百珍集』豆腐百珍