獣医病理学は、様々な動物の病気の原因や成り立ちを究明する学問です。本研究室では、臨床症例の病理解剖検査(剖検)や生体検査(生検)などの診断病理学と動物のがんやアレルギーの発症メカニズムに関する実験病理学的研究を行っています。主な研究内容は、1)犬、猫のがん幹細胞の特性解析、2)犬のがん免疫療法の開発、3)牛の好酸球性静脈炎の発症機構に関する研究で、これらの動物疾患の病理発生の解明や治療法の開発を目指し、日々取り組んでいます。
がん細胞のMHC class Iに提示されている抗原ペプチドと同じ配列の合成ペプチドでワクチン接種すると、樹状細胞はそのペプチドを取り込んで抗原提示し、それを認識するCD8陽性T細胞をCTLsへ成熟させることができる。がんペプチドワクチンは、CTLsを誘導してがん細胞を抗原特異的に殺すことを期待した方法である。私たちは、犬のメラノーマ関連抗原ペプチドの同定とその抗原を提示する犬のMHC class I(DLA-88)型との組合わせを解析しています。将来、メラノーマ罹患クライアントのDLA-88型を検査して、それに適合する合成ペプチドを用いた犬メラノーマの治療を計画しています。
当研究室では動物病院で摘出されたデキモノなどが何なのか、また死んでしまった動物の病変がどういった過程でつくられたのかを、病理組織検査という形で日々検索しています。そのような私達の活動は顕微鏡の小さな世界を覗いているばかりで地味にみられがちですが、想像以上に大きな世界が広がっており、ただ目でみるだけでは分からない様々な変化に気づくことができます。そんな世界に魅了され、昼夜を問わず研究に打ち込み、充実した研究室生活を送っています。
本研究室では勉強会での発表にも大きなウェイトが置かれています。発表の準備を通して病理に関する知識を深めると同時に、分かり易くヒトに伝えるテクニックも学ぶことができます。
また病理組織を読むことは臨床での腫瘍の診断などのみならず、感染症や薬物のからだへの影響を窺い知ることができるため、様々な分野での立証の方法として活用されています。そのため本研究室の卒業生の進路としては小動物臨床、製薬会社や公務員などがあり、幅広い分野で活躍されています。