私たちの周りには目に見えないたくさんの微生物が存在しています。このうち病原性を持つ微生物が、ヒトや動物に感染して病気を引き起こす事を「感染症」と呼びます。ヒトや動物の間でひとたび感染症が発生すると、またたく間に広がり、ヒトや動物の健康を損なうだけでなく経済的にも大きなダメージを与えます。また、感染症の中には野性動物からヒトに移る動物由来感染症(人獣共通感染症)も数多くあります。現代社会において、これらの感染症をコントロールする事は、ヒトや動物が健康に暮らすための大きな課題と言えるでしょう。感染症の原因となる病原微生物には、ウイルス・細菌・寄生虫・真菌などがありますが、我々の研究室では、主にウイルスを用いて、その病原性のメカニズムを分子レベルで解明し、予防や治療に役立てる事を目的としています。
サーズコロナウイルスの電子顕微鏡写真。ウイルス名のコロナは粒子表面の構造物が王冠(Corona)に見える事から。国立感染症研究所提供
ウイルスは微生物の中でもとりわけ小さく、遺伝子を蛋白質のカプセルに包んだだけのシンプルな構造をしています。そのシンプルさゆえ、自力で増殖することが出来ず、細胞に感染し細胞の代謝系を利用することにより初めて増殖する事ができます。感染した宿主はウイルスの増殖部位によって様々な症状を呈し、時には死に至ります。
我々の研究室では、主にコロナウイルスに関する研究を行っています。コロナウイルスは、家畜や愛玩動物、実験動物に様々な病気を引き起こすため、獣医学領域では非常に重要なウイルスです。また、動物由来感染症であるサーズやマーズコロナウイルスなどはヒトに対して高い病原性を持ち医学領域でも重要なウイルスです。現在は、主に動物コロナウイルス(マウス肝炎ウイルス、豚流行性下痢ウイルス、牛トロウイルスなど)を用いて下記の研究を行っています。
1)新規αグリコシダーゼ阻害薬による抗コロナウイルス薬の開発とその抗ウイルス機構の解明
2)コロナウイルス粒子形成機構に関する研究
3)コロナウイルス構造蛋白質の細胞内輸送に関する研究
4)インフルエンザウイルスの次世代経鼻ワクチンの開発(国立感染症研究所との共同研究)
This is Md. Taimur Islam from Bangladesh. I am 4th grade Doctoral student of laboratory of Virology and Viral infections of Nippon Veterinary and Life Science University. I feel very lucky because I have got chance to study about Virology in this well organized laboratory.
In this Virology laboratory, there are many modern, sophisticated materials, instruments and devices for conducting modern research in the field of virology. Also this lab has highly talented teachers and researchers. Currently we are working on bovine torovirus, porcine epidemic diarrhea virus and some other viruses. We are trying to explore the biological functions of different proteins of these viruses.
The environment of our laboratory is also very sound and healthy. All the students and teachers are very friendly, fun loving and cheerful. Also they are very kind as well. Sometimes we have arranged party and outdoor trip.
Lastly, I would like to welcome you in the new era of virology with our virology lab and wish your great success in your research career.
※タイムール氏は、退官された田口文広元教授の元で研究を行い、現在は国立感染症研究所ウイルス1部にて研究を行っています。また、氏の研究は高く評価され、第27回外国人留学者研究会(日本医科大学)では最優秀プレゼンテーション賞に選ばれました
(https://www.nvlu.ac.jp/veterinary-medicine/report/teachers-006.html/)
獣医感染症学研究室では、室員それぞれが各自の研究テーマ対して、真摯に取り組んでいます。私は、牛トロウイルスN蛋白質の核移行シグナルに関する研究を行っています。分子細胞生物学的な手法を用いて、日々実験を行い、N蛋白質の核移行を調節するアミノ酸領域を明らかにしようとしています。結果が思うように出ないといった大変なこともありますが、生徒思いの先生や個性豊かで優秀な仲間たちに助けられながら、充実した研究室生活を送っています。
本研究室は、自由な雰囲気で学生の考えや意志を尊重し、研究を志す学生にとって非常に恵まれた環境です。ぜひ、私たちと楽しい研究生活を送りながらウイルス研究の先端をのぞいてみませんか?